◆平成23(2011)年11月2日 沖縄タイムス 朝刊
「泣き声通報」3割が虐待 児童相談所が報告「もっと活用を」
那覇市や浦添市などを管轄する中央児童相談所に、児童虐待を疑って住民が寄せた「泣き声通報」は2010年度に99件あり、そのうち3割が虐待と認められたことが1日、明らかになった。
同相談所の島袋裕美所長が那覇市の県男女共同参画センターてぃるるであった県要保護児童対策協議会(通称・おきなわ子どもを守るネットワーク)の第1回代表者会議で報告した。島袋所長は「泣き声通報による対象世帯の特定の難しさはあるが、その3割が虐待ありという実態は重い」とし、通報の啓発の必要性を強調した。一方、県警察本部は、集合住宅などでは、泣き声通報による特定が困難で、調査の時間と労力がかかる実態を説明。県医師会は「医療機関に来る段階では最悪なケースが多い。子どもを救うためにも、泣き声通報をもっと活用してほしい」と要望した。ほか、学校と民生委員など地域が連携しやすい仕組みづくりを求める意見も出された。会議では、コザ児童相談所の兼浜保佳所長が、市町村の要保護児童対策協議会で不登校児世帯の支援取り組みを紹介。専門機関が個別に支援していた事例を全体で情報共有したことで「地域の自治会長が介入し具体的な支援につながった」と連携の成果を報告した。
◆平成23(2011)年11月2日 共同通信
緊急事案、すぐ児相所長に報告 中2虐待死で改善策
名古屋市で中学2年の服部昌己君(14)が母親の交際相手に暴行され死亡した事件を受け、市児童福祉センターは2日までに、身体的虐待を伴うなど緊急性が高い事案は相談の受理後、速やかに情報収集してセンター長に報告した上で一時保護など必要な対応を取る改善策を決めた。また「職員に事案の深刻性を見抜く力が不足していた」として、専門性を向上させるための研修も検討する。
センターによると、これまでは事案の内容にかかわらず、相談受理から報告までの期間を「1カ月以内」としていた。改善策で対象とするのは、児童が殴打されるなど一時保護の検討を必要とした「レベル3」以上の案件。
◆平成23(2011)年11月2日 中国新聞 朝刊
虐待防止へ職員有志始動 福山市がサポーター制 勤務時間外に見守り
福山市は市職員の有志を、児童虐待の防止のために地域と市を結び付けるボランティア「オレンジリボンサポーター」に登録する。昨年8月の市内の女児=当時(2)=の虐待死事件などを受け、市独自の事業として、当面11月末まで有志を募る。現在既に、52人が応じている。
サポーターは市子育て支援課が、虐待防止を職務の一つとする市児童部を除く部署の職員を対象に募る。サポーターは各自の地元で虐待の兆候を見つけたら通報。通勤など日常生活の際の見守り▽虐待防止事業の住民への周知▽同課が虐待の疑いを調べる家庭についての情報提供―などにもあたる。ボランティアとして登録するため、同課は活動を「勤務時間外のできる範囲」とする。登録者には児童虐待をめぐる市の講演会や研修会への参加も呼び掛ける。同課によると、都市部や税務部などからも登録があった。命名は、児童虐待防止のシンボルであるオレンジリボンにちなんだ。広島県によると、県内の市町が職員を虐待防止ボランティアに登録するのは初めて。同課の橋本功子課長は「市と地域の間に立ち、通報や啓発を積極的に進めてほしい」と話している。
◆平成23(2011)年11月1日 読売新聞
児童虐待死 大阪府が最多 3年半で15人「地域で孤立 要因」 本紙調査
2008年~11年6月の3年半に、大阪府は、児童虐待による死者数が15人と全国最多だったことが読売新聞の集計でわかった。東京10人、神奈川、埼玉各9人、愛知8人など大都市圏が続く。人口規模も大きい地域だが、専門家は「都市部は地域のつながりが薄く親子が孤立し、虐待が起きやすい」と指摘、積極的な介入支援を求める。11月は児童虐待防止推進月間で、啓発行事や相談の呼びかけなどが全国で行われる。
警察庁や都道府県警の統計を分析した。この3年半に虐待死した子供(18歳未満)は全国で120人にのぼり、70~90%が0~5歳に集中していた。都市部の犠牲者が多いのと反対に、鳥取、島根など12県で死者がゼロだった。けが人などを含めた被害者の総数は全国で1190人で、これも大阪が91人で最も多く、埼玉79人、神奈川77人が続いた。 大阪は、100万人あたりの死者数は1・7人で、宮城(2・14人)、京都(1・9人)に次ぐ。被害者数も、08年17人(うち死者3人)、09年31人(同3人)、10年31人(同7人)、今年上半期12人(同2人)と常に全国上位だ。09年には大阪市西淀川区で、暴行や食事制限などを受け、ベランダに放置された当時9歳の女児が衰弱死。同市西区で昨年、当時3歳と1歳の姉弟が自宅マンションに放置され餓死するなど社会に衝撃を与える事件が相次いだ。そのたびに、おかしいと感じる近隣住民がいながら早期通報に至っていないことが指摘された。大阪府家庭支援課は「地域の見守りが薄れるのは都市部の特徴。虐待を見逃さないよう親子を支えることが必要だ」とする。今年2月に府の責務を明確にした「府子どもを虐待から守る条例」を施行。育児支援を通じて子育て家庭に身近に接する市町村に対し、今年度から経験豊かな児童相談所OBの派遣を始めた。大阪市も、夜間の緊急通報に即応するため職員を宿直させたり、迅速に安全確認に向かうため、消防に出動を要請したりしている。才村純・関西学院大教授(児童福祉論)は「大阪は生活保護を受ける人が多く、経済的困窮で親が余裕を失って育児ストレスを抱えている可能性もある。地域からの孤立を防ぐには、家庭への訪問を増やすなど、『おせっかい型』の支援を強化すべきだ」と話す。
◆平成23(2011)年10月31日 毎日新聞 東京朝刊
児童養護施設:退所後の自立を支援 生活相談や奨学金、困った時の安全網に
児童養護施設などで育った人が社会生活に困らないように、施設関係者らが支援に乗り出している。進学をあきらめ10代で自立する人が多いが、幼少期の虐待による心の傷などで、仕事や家庭生活につまずいてしまう人もいる。家族のように相談にのったり、仕事を仲介するなどサポートの輪が広がっている。
東京都内の女性(32)は両親の行方が分からず、3歳まで乳児院で、その後は祖母に育てられた。病気の祖母を看病するため高校1年で中退し、職を転々とした。祖母も亡くなり、「頼れる人がほしい」と23歳で結婚。しかし、夫は限られたお金しか女性に渡さず、貯金の額も教えない。金銭的に自由を束縛する「経済的DV(ドメスティックバイオレンス)」だった。困り果て、小学生の時以来会っていなかった唯一の親類を訪ねたが、既に家がなかった。「親がいればすぐに逃げられるのにと思った」 今夏、知人の紹介で、アフターケア相談所「ゆずりは」(東京都小金井市)を知った。離婚に向けた手続きをアドバイスされ、別居にこぎつけた。職員が同行して生活保護も申請。現在はハローワークを通じ、パソコンや簿記などの職業訓練を受けている。「離婚したくても行く場所がなく、どうしようと思っていた。やっと人生のスタートが切れた」と女性は話す。
「ゆずりは」は、社会福祉法人「子供の家」が今年4月に設立し、どこの施設で育った人でも相談を受け付けている。弁護士らの協力を得て、自己破産手続きなどもアドバイスする。就労が不安定、アパート契約のトラブル、性的な被害に遭った――など、約半年間で42人が相談に訪れた。代表を務める高橋亜美さん(38)は「元気に退所した子どもたちが、頼れる人がいない社会で疲れ果てていた。人間関係のセーフティーネットがなく、少しでもつまずくと生活ができなくなってしまう」と話す。一般の社会人と同じような悩みでも、成育歴などが影響し解決が難しい場合がある。職場でしかられ虐待の記憶がよみがえり働けなくなったり、小遣いなど自由にお金を使ったことがなく、クレジットカードで多額の借金を負ってしまう人も。家族で暮らした経験が乏しく、家庭を持った際に夫婦や育児などの問題に対処しにくいケースもある。
東京都は昨年度、施設退所後1~10年の673人にアンケート調査した。正規雇用は男性57%、女性34%。退所直後に困ったことでは「孤独感・孤立感」が30%と最多だった。対象者は3920人だったが、施設などが連絡先を把握していたのは1778人。回答が寄せられたのはそのうち38%だ。都育成支援課は「答えられない人の方がより困っていて、連絡が取れないこと自体が問題という職員の声も多い」と話す。
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株式会社「フェアスタート」(横浜市)は、児童養護施設などで育った若者の就職を支援している。社長の永岡鉄平さん(30)は、人材派遣会社などで働いた後、教育関連の活動で、施設からの自立の困難さを知った。「彼らは18歳で自立を迫られ、職業も選べず住み込みの仕事を探すことも多い。一方、中小企業はやる気のある若手を探している。そこをマッチングしたかった」と話す。
都内の児童養護施設で育った女性(20)は高校卒業後、天ぷら店に就職した。「大学に行きたかったけど学費がない。とにかく働こうと求人を見て電話した」。正社員となり接客に励んだが、毎日12時間近く週6日働き、「一体何がしたいんだろうと涙が出た」。今夏、暮らしている自立援助ホームに、フェアスタートを通じて求人があった。携帯電話などプラスチック部品への印刷を手がける「ダイヤ工芸」(川崎市)。「毛糸編みが好きで、製造業で働きたかった。ここだ!と思った」 自分の生い立ちを理解してくれているため、安心感があるという。「他の会社だったら、採用試験の面接で経歴をどう話すか考えてしまう」。10月から働き始め、カーナビ部品の検査を担当。「黙々と働くことができて楽しい」と話す。同社がフェアスタートの紹介で採用するのは3人目。専務の石塚博臣さん(42)は「一般の採用では、続かない若手が多かった。厳しい環境で生きてきた人たちの経験に期待したい」とし、「勉強したかったのにかなわなかった子は、専門学校などに通えるように応援もしたい」と語った。
東京都板橋区の児童養護施設「西台こども館」では、退所者の自立を応援しようと、施設を運営する社会福祉法人の理事長らが9月、「松柏児童福祉財団」を設立した。こども館の近くに宿舎を整備し、1人暮らしを始める人に経済的に自立できるまで、賃料無料で住まいを提供していく。奨学金制度も設け、月8万円を上限に貸しつけ、学費や生活費に充ててもらう。同館の田宮実園長は「18歳を過ぎると国からの補助も対象外なので、財団の応援はありがたい。来年3月に館を出る予定の高校生が2人おり、支援策ができて大学進学に希望を持ったようだ」と話していた。
◇昨年度から国施策拡充
児童養護施設は原則として、18歳未満(高校卒業まで)が対象。15~19歳の子どもが働きながら共同生活する「自立援助ホーム」は退所後の受け皿になっているが、就労が不安定な人も多い。04年の児童福祉法改正で、児童養護施設の目的に「退所した者に対する相談その他の自立のための援助」が盛り込まれた。厚生労働省は10年度から、「退所児童等アフターケア事業」を本格実施。自治体がNPO法人などに支援事業を委託するもので同年度は東京、鳥取、石川の3都県と大阪府、大阪市、堺市の計6自治体が実施した。このうち東京では、施設で育った当事者が主体となるNPO「日向ぼっこ」が文京区内にサロンを設け、週3回程度、一緒に食事しながら悩みなどを語り合っている。
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