僕は大学進学が全てではないと思います。しかし、大学進学をしないということが自分の強い意志でない限り日本で生きていくには様々なハンディキャップを負うのが現実です。職業選択の自由が狭まるのはよく言われています。しかし、児童養護施設に好きで入ったわけではないのに、子どもの未来が限定されるのはおかしいと思うのです。
最新のデータで、児童養護施設退所児童の大学進学率は、平成21年現在で10.8%(全国平均53.9%)
少し古いデータですが2004年のデータを見てみて下さい。
(1)児童養護施設入所者の高等学校卒業後の進路状況
(3)児童養護施設退所後の高校卒業後の進学先内訳
参考:『児童養護施設と社会排除-家族依存社会の臨海-』(解法出版社)
このデータは、2004年です。この当時の数字で23.1%あった数字が、5年後の2009年は10.8%と下がっている現状があります。
大学進学の場合、進学後の経済的な問題も大きいと思います。授業料が減免されても、奨学金だけでは生活費までまかなうことができず、大半の学生が自分で働かなくてはならないのです。
全国児童養護施設協議会の調査では、2005年4月からの1年間で、大学などに進学した子どもの12%が退学。「経済的理由」が、「学校生活・学業不適応」などに続き3番目に多かったというデータもあります。
大学入学は奨学金でどうにかなってもその後の経済的困難により退学せざるを得ない子どもたちが多いのです。
今回は詳しく書きませんが、児童養護施設の職員の知識などによって大学進学が決まるのも現実です。東京や大阪などの都市部の児童養護施設以外では、「大学進学なんて一人もいないんだから」などという職員の言葉によって、進学を自分の中で大学進学を考えないようにする子も多いのです。
しかし、社会に出て、大卒でないのに資格も何もなく卒業していく辛さは、退所者が社会に出てから大学を目指すことが物語っていると思います。
マスコミなどで取り上げられ児童養護施設退所者は、「施設超エリート」です。その他の普通の子たちは、運良く自立援助ホームにたどり着けば良いのですが、多くは18歳で社会に放り出されます。
「キャリア教育は、中学・高校でやっているんじゃないの?」
という声も聞きます。ただし、多くは思春期の多感な時期にも関わらず、施設の中で生き抜くことを考えるだけで精一杯です。そして、親から離れた「敗北感」を学校の先生は支援する術を持っていません。
また、児童養護施設職員の方の進路指導の余裕もないので、この数字が上昇していくには、
1.適切な進学情報の提供
2.大学入学後の奨学金の充実
の2点が不可欠です。精神的に不安定な子たちが多いのですが、やはりきれい事抜きでお金があるという安心感は何事にも変えられません。
東日本大震災が起きたことによって、震災で親を失った子どもたちへの支援が始まりました。これを機に児童養護施設の子どもたちのことも一緒に考えて欲しいと思います。
「児童養護施設にいるから選択肢は限られている」
そんな忌々しい伝統を断ち切る必要があります。児童養護施設の子どもたちの未来への選択肢が制限される理由など一つもありません。
平等を唱えるなら、情報をがしっかり提供され、未来へのグランドデザインを描くことができるようにしなければならないと思うのです。
そのために、「まな本募金」があります!!