◆平成23(2011)年12月29日 福井新聞
臓器提供、虐待除外へ体制整備 福井大、18歳未満の脳死
18歳未満からの脳死臓器提供について、福井大医学部附属病院(福井県永平寺町)は、厚生労働省が求める虐待された子どもを対象から除外するマニュアルと院内委員会を整備し、28日運用を始めた。県内では県立病院(福井市)に次いで2例目。6歳未満の小児を含め全年齢での提供が可能になった。
県内には脳死臓器提供が可能な施設が両病院を含め4病院あるが、このうち県済生会病院と福井赤十字病院(ともに福井市)は現時点で、18歳未満の対応を見送ることにしており、これで県内における脳死臓器提供の当面の体制が整った。福井大病院のマニュアルは県立病院と同様、厚労省の参考例に準拠した内容。脳死状態の原因となった事故や病気に不審な点がない場合でも、普段や過去に虐待や育児放棄(ネグレクト)がなかったかを調べる。具体的には虐待に特徴的な皮膚の外傷跡や、保護者の説明と矛盾する外傷などがない場合でも、特に2歳未満の場合、コンピューター断層撮影装置(CT)で頭や胸を調べ、乳幼児に多い種類の虐待の有無を調べる。さらに児童相談所や保健所、警察に照会するなど、外観からは分かりにくい育児放棄や性的虐待を含めた計34のチェック項目を規定。「虐待がないと確信できるか」を判断するとしている。虐待の有無を判定する「子ども虐待対応委員会」は、小児科医や救急医、精神科医ら13人で構成。実際に外部機関への照会に当たる医療ソーシャルワーカーも加える。「虐待がない」と判断された後の法的脳死判定は、特に6歳未満について、判定の間隔を大人の4倍に当たる24時間とすることなど、厚労省の基準に従う。同委員会委員長の大嶋勇成教授は「提供を決める両親の善意を疑うことはつらいが、透明性を担保する必要がある」と体制整備の背景を説明。小児の脳死判定について「見極めは非常に難しく、日本全体で一層の知見を蓄積する必要がある」としている。同病院は、日常診療を含めた「子ども虐待対応マニュアル」を作成し、脳死臓器提供についても規定した。従来医師に委ねられていた児童相談所への通告などの対応を、病院として組織的に取り組む体制に改めた。
◆平成23(2011)年12月27日 読売新聞
里親関与策など知事に報告書 県児童虐待検証部会=滋賀
里親の男性が昨年10月、女子中学生の体を触ったとして県警に逮捕された事件について、県社会福祉審議会の児童虐待事例検証部会(部会長=野田正人・立命館大教授)は26日、里親への積極的な関与策などを盛り込んだ報告書をまとめ、嘉田知事に提出した。
医師ら委員7人が防止策を協議してきた。報告書では、里子同士の交流の拡大や里親研修の充実のほか、児童相談所の職員が里親希望の家庭の家族全員と面接するように努めることなどを求めている。野田部会長は「多くの里親が善意で家庭を開放しており、虐待が疑われることは制度全体の危機につながる。改善に向けて努力してほしい」と話した。逮捕された男性について、大津地検は昨年11月、処分保留で釈放した。
◆平成23(2011)年12月27日 西日本新聞 夕刊
「子ども避難所」に応援歌 福大生シンガー・的野さん
福岡市のシンガー・ソングライター的野祥子さん(20)が、虐待などで家に帰れない少女が一時的に暮らす京都の「子どもシェルター」を応援する歌を作り、関西で反響を呼んでいる。歌の名前は「ひだまり」。暖かな日差しが子どもたちを包むような場所に-。心からそうなってほしいと願いながら歌う。
今年9月、福岡市のキャナルシティ博多の屋外ステージ。CDアルバムの発売記念ライブをしていた的野さんの歌に、通り掛かりの男性が足を止めた。京都市のNPO法人「子どもセンターののさん」の理事、吉田明弘さん(46)。「歌声があまりに心地よくて。アルバムタイトルもHome(家庭、故郷)。直感でした」。子どもシェルターのために歌を作ってほしいと、その場で依頼した。「ののさん」は来年3月、京都府内に子どもシェルターを開設し、さまざまな事情で帰る家庭のない少女に衣食住を提供する。施設をたくさんの人に知ってもらえるように、シンボルとなる曲があればと考えていた。吉田さんは小型DVDプレーヤーを用意し、的野さんに映像を見せた。行き場をなくした子どもの現状。なぜシェルターが必要か。支援する人たちが切々と訴えていた。その言葉を、的野さんは小さなノートに書き込んだ。曲作りにはいつもより時間がかかった。行き詰まったときは施設の資料やノートを広げた。虐待された子どもの体験談も読んだ。1カ月後、「ひだまり」が完成した。
羽を休めて/空を見上げて/青と白と太陽の光/あたたかなひだまりの中で/大きな愛を受け止めて
シェルターは、傷ついた子どもたちが社会へ旅立つ前に、少しだけ羽を休める所。曲調は空の広がりを感じさせるように明るい。吉田さんは「私たちが伝えたいメッセージがいっぱい詰まっている」と喜んでいる。11月は京都、大阪、奈良のライブハウスやFM放送で披露した。歌う前に必ず子どもシェルターの話をする。「歌でお手伝いができて本当にうれしい」と的野さん。大みそかの夜は大阪・心斎橋のカウントダウンイベントに出演する。もちろん、「ひだまり」を聞いてもらうつもりだ。的野さんは福岡大生。「ひだまり」はインターネットの動画サイト、ユーチューブで視聴できる。
◆平成23(2011)年12月26日 産経新聞
今年も各地で「伊達直人」登場 児相でランドセルなどクリスマスプレゼント
各地の児童相談所などで、22日~25日にかけランドセルなどの“クリスマスプレゼント”が相次いで見つかった。昨冬同様、タイガーマスクの主人公「伊達直人」を名乗る贈り主も多く、職員らは「年末に温かい気持ちのプレゼントをもらった」と話している。
神奈川県厚木市の厚木児童相談所に23、24の両日、菓子や文具、加湿器などの贈り物3件が相次いで届けられた。贈り主は伊達直人などだったが、それぞれ別人からのプレゼントとみられるという。千葉県我孫子市でも市役所前で25日午前、ランドセル5個が見つかった。贈り主は「我孫子にもいた沢山の伊達直人」。山形県南陽市役所では22日午前6時ごろ、ランドセル6個があるのを警備員が見つけたが、ここでも伊達直人の名前で「メリークリスマス!! 未来ある子供たちにプレゼントしてください」と書かれた手紙があった。埼玉県では、県中央児童相談所(上尾市)など3カ所で23~24日にかけ、計16個のランドセルが積まれているのを職員が発見。このほか、群馬県高崎市の児童養護施設でもクリスマスケーキなどが届けられた。
◆平成23(2011)年12月24日 読売新聞
要保護児童22%増 10年間で 1万人あたり18人 虐待など
虐待などが理由で親と一緒に暮らせない要保護児童が2009年度、子供(18歳未満)1万人あたり18・1人に上り、10年前より22%増えていたことがわかった。厚生労働省と総務省の統計を読売新聞が分析した結果、児童養護施設と乳児院、里親家庭で暮らす要保護児童は1999年度の3万4416人から09年度は3万7398人と2982人増加。1万人あたりでは10年間で14・8人から18・1人に増えた。
一方、厚労省による08年2月の調査では、要保護児童で虐待を受けたことがあるのは、児童養護施設で53・4%、乳児院で32・3%、里親で31・5%を占めた。厚労省は「虐待の影響でさらに要保護児童は増加するとみられる」としており、家庭に近い環境で成長できるよう児童養護施設などを小規模化しながら増やし、現在1割の里親委託率を今後十数年で3割に引き上げる。