この本に出てくる「社会的入院」は日本の悪しき伝統である。ただし、日本社会が少し変わった人々を受け入れる体制は未だにできていない。
社会的入院とは「治療の必要がないのに、社会で生活できないので入院生活している」こと。もっと大ざっぱに言えば「隔離」と同義である。
著者は群馬県太田市の三枚橋病院の開放病棟を例に挙げている。日本最初の全面開放病棟を持った精神病院であり、しかも1970年代にそれを実現した。ただし、元理事長であり精神科医の石川信義氏の力があったからこの病院は成り立った。
太田市で精神病患者が住むためにアパートを借りるために不動産屋を回り土下座をして借りてもトラブルが起き、病院に患者は戻ってくる。それでも彼は地域に根ざした精神障害への偏見を取り除くことに尽力した。
三枚橋病院の後には、べてるの家が出てきたが、この二つのモデルは普及していない。やはり、この二つの精神障害者が地域で暮らすモデルは、医療・行政・福祉・地域住民が連携してできたのである。
ただ、今のままの精神医療が続く限り、特別養護老人ホームが足りないので、精神病院に入院する高齢者が増えてくる。そこで、隔離されていたら、生きていける命が短くなる可能性もある。
内容だけ見ると現状と皮肉混じりで、精神医療批判の歴史を読んでいるようになってしまう。そうではなくて、きっと著者は読者が精神障害への理解をもっと社会が深めることにより、薬漬け精神医療がなくなる、精神科も内科的要因を探るなど今後の解決策への指針が詰まった一冊である。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この記事がお役に立ちましたら是非、こどもたちのためにJust givingチャレンジ(←クリック)へ
寄付をお願い致します。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。