◆平成23(2011)年10月31日 毎日新聞 地方版
里親制度:浜松医大・杉山教授が講演 虐待と障害に因果関係 /静岡
さまざまな事情で親と暮らすことができない子どもを養育する里親制度について広く知ってもらおうと30日、静岡市内で講演会(県など主催)が開かれた。浜松医科大の杉山登志郎特任教授(児童精神医学)が「子どもたちに必要なもの」をテーマに講演。10月は「里親月間」で注目を集め、約100人が聴き入った。
杉山氏は、虐待を受けた児童の治療を続けながら、自閉症や発達障害との関連性について研究を続けている。講演で杉山氏は、発達障害を持つ子どもが虐待を受けやすいとする統計データや、虐待が子どもの脳に与えるダメージについて説明した。「障害と子どもへの虐待はニワトリと卵のような関係だ」と述べ、虐待と発達障害が密接な因果関係にあることを強調。虐待を受けると親や周囲と正常な人間関係を築くことが難しくなることを指摘した。さらに「里親は、虐待を受けた子どもが持つマイナスの対人関係を健康な関係に戻すため試行錯誤している」と述べ、専門家による支援体制が不可欠と訴えた。里親制度に関心があり参加した静岡市葵区若松町、無職、望月記代美さん(60)は「虐待の具体的なケースを聞きショックも受けたが、子どもたちが人への信頼を取り戻すために自分ができることはないかと、考えさせられた」と話した。県こども家庭課によると、県内で里子を受け入れている里親は112組、里親登録は324組(3月末現在)と、5年前と比べ約80組減少している。
◆平成23(2011)年10月30日 読売新聞
里親力こそ傷癒やす 福岡市 NPOと連携、登録急増
「家族と暮らせない子どもに温かい家庭を」。虐待などで保護された子どもを、こうした合言葉のもと、親代わりになる里親へ積極的に委ねる福岡市の取り組みが注目されている。
福岡市の江川隆さん(66)と直美さん(60)夫婦は、1歳から高校2年までの5人の里子と暮らしている。子どもたちが学校から戻ると家は一気ににぎやかになり、近所の子らも顔を出す。そうした様子を2人はニコニコと見守る。 夫婦が里親になったのは6年前。今春からは、経験ある里親が補助者の助けを得て5、6人の子を養育する「ファミリーホーム」になった。これまでに一緒に暮らした里子は短期も含め計12人になる。直美さんは「色々な問題を抱えた子がいて大変なこともあるが、やめたいと思ったことはない。傷を癒やし将来幸せになってくれたらうれしい」。隆さんも「子どもの成長を見るのは楽しい」と言う。
福岡市が里親推進に乗り出したのは2005年。全国的に虐待や親の病気などで保護される要保護児童が増えるなか、市内の乳児院や児童養護施設が満杯となり、県外施設へ預ける事態になっていた。同市の児童相談所は里親を増やすため、NPO法人「子どもNPOセンター福岡」に協力を依頼。市民に里親の役割を知ってもらうフォーラムや出前講座など、普及啓発事業に連携して取り組んだ。同法人事務局長の宮本智子さんは「家族と暮らせなくなった子が、地域や友達からも離されて遠方の施設へ行くと知り驚いた。現状を市民に知らせねばと思った」と話す。その結果、毎年3、4世帯だった里親の新規登録が05年度は13世帯と急増。以降も年々増え、里親の登録総数は43世帯(04年度)から85世帯(10年度)へ、里親に委託された子ども数も27人から105人へと大幅に増えた。里親が増え、別の発見もあった。表情が乏しく他人との交流が難しかった子が、里親宅に移り半年後、里親に甘え無邪気に遊ぶ「普通の子」に変化していた。「愛情を注いで育てる里親の力」を同市児童相談所の職員らも再認識したという。同相談所所長で精神科医の藤林武史さんは「傷ついた子には一対一のきめ細かいケアが大事だと教えられた。里親は委託後のフォローなど手間はかかるが、集団生活に合わない子が増えており、もっと広げていきたい」と話す。同相談所は里親担当の専任職員を4人置き、相談や交流会、里子の一時預かり、家庭教師のボランティア派遣など里親支援の拡充も進めた。「いつでも相談できるから安心」と江川さんらも言う。福岡市をはじめ、この数年で里親への委託を大きく伸ばした自治体の取り組みを調べた厚生労働省家庭福祉課は〈1〉里親担当の専従職員を置く〈2〉里親支援を充実させる――などが普及のポイントとみる。里親が普及した欧米の事情に詳しい京都府立大教授の津崎哲雄さんは「福岡市は市民や関係機関と上手に連携した里親推進のモデル」という。「日本でも本格的に増やしていくため、自治体が経験を蓄積した里親専門職員を育て、24時間対応の相談事業といった支援体制を整えていくことが欠かせない」と話す。
里親 親と暮らせない18歳までの子どもを自治体から委託されて育てる。養育中は手当や養育費が支給される。全国で保護された約4万7000人のうち、里親へ委託されるのは1割と低く、9割が児童養護施設や乳児院などで暮らす。
◆平成23(2011)年10月29日 読売新聞
地裁所長襲撃事件 「取り調べ 不当に威圧的」 2審も大阪府に賠償命令
大阪地裁所長襲撃事件で無罪が確定した男性ら5人が、違法捜査で精神的苦痛を受けたなどとして、大阪府などに計約6000万円の国家賠償を求めた訴訟の控訴審判決が28日、大阪高裁であった。坂本倫城(みちき)裁判長は1審・大阪地裁判決と同様、府警の逮捕、取り調べの違法性を認め、府が5人に計約1450万円を支払うよう命じた。
判決で坂本裁判長は、当時13~16歳の元少年3人に対する捜査を検討。〈1〉取り調べ中に警官が元少年の頭髪をつかんだ〈2〉威圧的な取り調べで警察官の意図に沿う迎合的な供述をさせた--などを挙げ、「配慮を欠いた違法な取り調べだった」と認定。こうして得られた供述に基づく逮捕も違法、と指摘した。成人2人の取り調べについても「人格を侮辱し、不当に威圧的だった」と述べた。裁判では大阪地検と、当時13歳の少年の取り調べ場所になった児童相談所(児相)の責任も争われたが、坂本裁判長は地検について「違法な取り調べを認識できなかった」、児相についても「大声を出した警官に注意していた」として、国と、児相を管轄する大阪市への請求は再度退けた。また、1審判決とは慰謝料の額を変更し、賠償総額を約70万円減らした。判決後、原告の会社員ソウ(そう)敦史さん(37)と元少年3人が記者会見。さんは「警察は私たちが犯人ではないと分かっているはずで、これ以上争わず、謝罪してほしい」と上告しないよう求めた。元少年らは「警察は頭を下げに来てほしい」などと語った。
〈大阪地裁所長襲撃事件〉 大阪市住吉区で2004年2月、当時の大阪地裁所長が襲われ、約6万3000円を奪われた。大阪府警は強盗致傷容疑で成人2人と少年2人を逮捕、別の恐喝未遂事件で補導されていた当時13歳の少年も取り調べた。成人2人は大阪高裁で無罪が確定。中等少年院送致の決定を受けた少年2人も保護処分取り消しなどで「無罪」が確定した。
◆平成23(2011)年10月28日 毎日新聞
名古屋・名東区の中2暴行死:情報共有徹底を要請 県警が市に
名古屋市名東区引山の中学2年、服部昌己君(14)が自宅で暴行され死亡した事件で、愛知県警は27日、市児童福祉センター(児童相談所)が暴行を把握しながら県警に通報しなかったとして、市に通報や情報共有の徹底を要請した。
県警は09年2月、市の各児童相談所長へ児童虐待の通報基準を示し、書面で協力を求めているが、市が現在も受け入れを保留している。このため、27日の県警と市幹部による治安連絡会で、県警生活安全部の神谷満寿穂部長が再度求めた。県警は(1)身体的虐待で病院に搬送された(2)過去に身体的虐待で取り扱った児童を再度取り扱った(3)性的虐待の疑いがある――などを通報事例として挙げ、事件は(2)に該当するという。唐木宏和・市子ども福祉係長は「県警との連携方法は今後詰めていきたい」と話している。一方、県警は4月から警察官2人を市内2カ所の児童相談所に派遣しているが、児相の指揮・命令系統に組み込まれ、県警の進言が反映されにくい点もあるという。県警は進言が児相側に受け入れられなければ、派遣警察官から直接県警に通報させる。
◆平成23(2011)年10月28日 読売新聞
虐待防止へ 共同CM 近畿の6府県 4政令市制作
近畿6府県4政令市は27日、児童虐待情報の早期通報などを呼びかける2種類のテレビコマーシャル(CM)=写真=を作った。児童虐待防止推進月間の11月中、在阪5局が、福井、三重、徳島、香川を含む10府県で計570本程度を放映する。
大阪府が昨年制作したCMを改編した。「虐待シグナル」編は、西田敏行さんが「長時間泣いている」「深夜、外に出されている」などの兆候を語る。「見えにくい」編では、影しか見えない大人から少女が暴力を受ける様子を描く。児童相談所の全国共通ダイヤル(0570・064・000)も紹介している。全国紙などの朝刊(11月1日付)で、児童虐待防止を訴える広告も掲載する。
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