◆平成23(2011)年9月23日 毎日新聞
16歳少女:母の勧めで覚醒剤、売春…行政、実態見抜けず 「虐待」の意識、本人になく
札幌市の無職少女(16)が実母の勧めで売春を繰り返し、覚醒剤も使用していた問題で、札幌家裁(池田好英裁判官)は22日、覚せい剤取締法違反(使用)の非行内容で少女を中等少年院に送致する保護処分を決定した。少女にはこれまでも児童相談所や児童自立支援施設が関与してきたが、深刻な実態を見抜けなかった。本人は虐待を受けた認識すらない様子という。少年院に送致される前に、なぜ救えなかったのか。関係者に重い問いが投げ掛けられている。
少年審判の決定などによると、少女は8月中旬、自宅で実母の再婚相手の男(35)=同法違反で起訴=によって覚醒剤の注射を受けた。捜査関係者によると、少女は6月ごろから覚醒剤を始め、約10回使ったと供述。また「母親に『稼いできて』と言われ、小学6年から売春をしていた」などと話したという。決定は保護処分の理由を「生育歴や家庭環境などを総合的に考慮した」としている。少女は行政の支援と無縁だったわけではない。中学1年の時に実母が覚せい剤取締法違反容疑で逮捕され、当時管轄だった道南の児相が少女を一時保護。だが実母は執行猶予付き判決を得たため、いったん実母に少女を戻した。この児相の幹部は「売春強要を把握していれば親元に戻さない。当時はそうした虐待の情報は得ておらず、判断に問題はなかった」と話す。その後、少女は児童自立支援施設に入所したが、実母が同居を希望。少女も応じ、今年から札幌市内で再婚相手と一緒に暮らし始めた。この際に市の児相が面談したが、母子関係や家庭環境に問題はないとして同居を認めた。担当者は「もともと親の同意で施設に入っており、強制ではない。当時は虐待情報もなかった」と話す。だが市教委によると、少女は同居後も中学校に通わなかった。教頭は2度自宅を訪ねて登校を促したが、結局不登校のまま卒業。少女は社会との接点を失っていった。少女は今後、少年院で集団生活を送りながら、高校程度の学習や就労技術取得に取り組む。出所後は保護司の監督下で生活するが、実母や義父と再び関係を持つ可能性もある。それぞれの段階で、児相は虐待を発見できる可能性はなかったのか。道保健福祉部は面接記録などを基に、検証する方針という。
◆平成23(2011)年9月21日 読売新聞
虐待家庭立ち入り 児童相談員ら訓練=愛媛
愛媛県内の3児童相談所と県警などは20日、児童虐待の疑いのある家庭への立ち入り調査などを想定した訓練を松前町西古泉の県警察学校で行い、児相職員や警察官ら約50人が実践的な対応方法を学んだ。
虐待の迅速な発見を目的に初めて実施した。同校内にある仮家屋を児童虐待の疑いのある母子宅に見立て、児相職員4人と警察官2人が訪問する形式で訓練を開始。電気メーターや屋内からの物音で在宅を確認し、玄関や窓から呼びかけを続けた。警察官ふんする内縁の夫が威圧的な態度で帰るよう迫ったのに対し、「子どもの安全を確認するまで帰れません」などと粘り、家の中で子どもを模した人形に付いたあざなどを確認していた。2008年4月施行の改正児童虐待防止法では、裁判所の許可を受け、強制的に児童宅に入れる「臨検捜索」を命じる権限が知事に与えられており、奥藤久男・県警少年課次長は「児童相談所と警察は今後一層の連携が必要だ」と話した。
◆平成23(2011)年9月20日 産経新聞
不服申し立てを親に告知せず 児童虐待で一時保護の親に10万円支払いで和解案 秋田県
秋田県北秋田市内で平成21年3月、小学5年生の男児(当時)を北児童相談所が児童虐待の疑いで一時保護した際、法的に決められている不服申し立てについて保護者側に告知しなかったことが20日、分かった。
その後、児童の親が22年6月、秋田地裁に一時保護処分を違法として、県を相手取り、550万円の損害賠償を求め提訴、県が10万円を親に支払う和解案が秋田地裁から提示されている。秋田県議会福祉環境委員会で、県側が説明した。県は県議会の議決を経て、和解する方針。秋田県子育て支援課によると、21年3月13日、秋田県警大館署が大館西道路を歩いている男児を保護。児童虐待の疑いがあると判断し、同児童相談所に通告した。同児童相談所は冬に戸外に閉め出す行為などが児童虐待に当たるとして一時保護処分を決定した。だが、通知が遅れたうえ、法律で決められている不服申し立ての説明文を書き落としていた。同課では「県に落ち度があるのは明らか。トラブルの対応に追われ、不服申し立ての告知を忘れてしまった」としている。
◆平成23(2011)年9月18日 静岡新聞
児童精神疾患専門医が連携 浜松方式の診療所オープン
発達障害や情緒障害など児童の精神疾患を専門的に治療する「子どものこころの診療所」が17日、浜松市中区鴨江の市保健所横にオープンした。診療所の児童精神科医とともに浜松医科大や国立天竜病院など複数の医師が連携して子どもを治療する全国初の試みで、不足している専門医の育成も目指す。
診療所は中学3年までの子どもが対象で、保護者の指導やサポートも行う。診療所所長で精神科の山崎知克医師が常駐し、浜松医大児童青年期精神医学講座の杉山登志郎特任教授ら同大の医師らも交代で診察に当たる。浜松市が開設し、同市発達医療総合福祉センターを運営する市社会福祉事業団が運営を担う。同日、開所式が行われ、鈴木康友市長や浜松医大精神神経科の森則夫教授らが出席した。開設に尽力した杉山教授は「外来窓口や病床を持つ病院、専門家のいる大学が診療所と連携する仕組みは「浜松方式」として全国のモデルとなるはず。保護者のペアレントトレーニングも行い、普及させていきたい」と抱負を述べた。市内には同様の施設として市発達医療総合福祉センターがあるが、患者の増加に伴い、初診は2〜3カ月待ちの状態で、専門医や診療施設の少なさが課題となっていた。山崎所長は「発達障害や情緒障害の子ども、保護者がともに元気に生活を送れるように支援していきたい」と話した。診療所は予約制で地域の病院や保健所などからの紹介状が必要となる。
◆平成23(2011)年9月17日 共同通信
親族里親、活用広がる 131人の養育者認定 大震災孤児は236人
東日本大震災で親を失った子どもの養育で、国などから生活費の支給を受け、親族が親代わりに育てる「親族里親」制度の活用が広がっている。厚生労働省によると、震災で孤児となった18歳未満の子どもは236人。このうち親族里親の認定件数は、17日までに97件(子ども131人)に上り、半数以上の子どもの養育者が親族里親に認定されたことになる。
厚労省によると、震災で孤児となった子どもが最も多いのは宮城県の122人、次いで岩手県の93人。福島県は21人だった。うち3人が児童福祉施設に入所。それ以外はほぼ全員が親族の元で暮らしているという。親族でも4親等以上は親族里親とされず、一般の里親と同じ「養育里親」の扱いになっているが、養育里親の認定も7件(子ども10人)。親族里親、養育里親とも、里親になれば、子ども1人当たり月額4万7680~5万4980円の生活費や、教育費も支給される。しかし、制度が知られていなかったこともあり、当初は申請数も少なく、宮城県内では4月末まで申請ゼロだった。津波で甚大な被害を受けた同県石巻市や東松島市を管轄する宮城県東部児童相談所は「子どもを引き取る親族も被災者。避難所から仮設住宅に移るなど生活再建にめどがついたことで、申請をゆっくり考える余裕ができたのではないか」と指摘する。親が行方不明の場合も申請できるが、「気持ちの整理がつかない。(6月18日の)百か日を過ぎてから手続きをしたい」などと話す親族もいたという。震災から半年が過ぎており、この間に現状を受け入れ、生活再建を目指すため申請に踏み切る養育者も多かったとみられる。震災後、児童相談所職員が避難所を回るなどして孤児の把握や制度の説明に努めており、厚労省の担当者は「孤児の人数が今後、大幅に増えることはないが、制度の利用はさらに増えるだろう」としている。
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