改めて本書を読み直して思ったのは、
「日本の子どもは小学校低学年から疲弊している」
ということ。それを年配の教師は「子どもは元気いっぱいだから」という根拠なき信仰。最近は、朝は元気に挨拶することが昔よりも奨励されているが、実は朝の挨拶に子どもの変調が見て取れるという。また、その疲れのひとつにモノの多さも指摘されている。おもちゃも昔と違って数種類のおもちゃが同時に流行し、ゲーム機も数種類のハードを使いこなす子どもも多い。
こんな子どもたちの幸福度調査をユニセフが行った。そして日本の15歳児の子どもが主観的に「孤独を感じる」を感じると答えた子どもは30%もいて、調査国の中では群を抜いて多かった。
子どもたちの自尊心の低下は、小学校六年が一番低かった。その後も下がり続け、対象の16歳が最低となっている。
子の自尊心が低い子どもの中でも学校別では高校の実業高校の子どもの自尊心の低さが傑出している。これは、調査高校長は、
「小学校のとき勉強につまづき、そのまま毎日苦痛な授業を受け続ければ自尊心など育たなくなります」
と言う。これから思うことは全国学力テストの平均点を上げても子どもの生きる力の根幹である自尊心上昇にはつながらないということだ。
また著者の診察室で聞く限りでは、一人っ子で親と一緒にいることが苦痛だと訴える子もかなりいるとのことである。これは少子化問題と虐待問題とも関係していて、被虐待児の自尊心がより低いのは当然の結果である。
さらに虐待を受けた子どもたちは、発達障害と同じ行動や認知が見受けられるということである。僕の経験でも虐待がないADHDは社会性をある程度早期に回復することが可能であるが、虐待を受けた子どもの粗暴性はADHDと似ているがなかなか収まらない。
この日本の子どもに関する処方箋は、まず親の自尊心回復。そして、子どもの声を聞くことというありきたりなものになる。しかし、この二つがまずは端緒になる。
また、家庭・学校・地域の子どもの育て方の価値観の共有である。最近は、この三箇所で言うことが違ったりして子どもが混乱した結果、自尊心の低下につながるケースも散見する。社会的養護の観点からも三位一体の子育てをすることは必要不可欠だろう。
この本の発刊当時から二年経った今ではさらに状況も変わっている。それでも子どもたちの自尊心が回復しなければ日本の未来は暗いままである。
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