読売光と愛・郡司ひさゑ奨学基金を受けて児童養護施設から大学や専門学校のへ進学した子どもたちの作文集である。 しかし、この奨学金だけでは足りない現実が書かれている。 また、少なくとも高校三年生の頃からお金の計算をしないと入学してから苦しいという声も多い。
「施設で過ごしていた頃が一番幸せだった」 という言葉が印象に残る。施設では決まった時間におき、ご飯も食べられ、衣食住が揃っている。それに比べ、一人暮らしとなると行政手続きやアルバイトなどをしながら、大学に通うという過酷な現実に直面する。 「施設に入って素直になれた」などの児童養護施設礼賛だけでなく、規律の厳しい児童養護施設だった子がドロップアウトした話など様々な子どもたちの生の声が聞こえる。 もちろん、この本に作文を書いた子どもたちは施設エリートの部類だろう。
ただ、この本から演繹的に学ぶものがあるとすれば、児童養護施設の職員の進路指導とし先輩が進学したロールモデルがあると高校卒業後の進学をあきらめていた子もやる気を見せるのである」 回りまわって慶応大学の法学部に入学した子は、AO入試で自分が施設出身であることを公言し、それで弁護士となって児童福祉しにかかわりたいと思ったらしい。
最後に印象的だったのが一橋大学に進学したこの言葉だった。 「私たちは家族や家がないことについてかわいそうというまなざしや同情がほしいのではありません。贅沢出来るたくさんのお金がほしいのではありません。ウェア足した地は、家や家族がなかったことことによって経験できなかったことを、追体験できるチャンスがほしいのです。そのチャンスを生かし、たくさんの人と出会い、笑ってないて、時には怒って、自分の存在を確かめたいのです」 確かに、作文の中では大学に入って自由になり、お金を使い込んでしまい、施設に戻って大学に通うことになった子の例も出てくる。
また、一般の高校生でも大学進学が困難な人は少なくないので、施設出身者だからといって甘えるのはおかしいと自らを戒める奨学生施設出身者OBもいる ただ、入所できる施設を子どもが選べない以上、希望すれば誰もが進学支援を受けられるようにすることが格差解消のため任急務であろう。
ただし、進路指導といっても大学の入試形態の多様化により、高校の進路指導担当者が知らない御時勢である。さらに、定員割れが多くても、塾や予備校に通う子もいる。 しかし、欲を出さなければ、参考書や問題集の選定をしっかして、使い方を教えれば独学でも大学進学は可能である。それは、長年中学から大学受験まで「受験」に関わってきた人間として確実に言えることである。
個別差はあっても、勉強の基礎力をつけることは就職する際にも役立つ。さらに受験情報を与えることによって、進学率がアップした実例もある。自分がやるべきことを再確認した一冊だった。
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