◆平成23(2011)年10月28日 長崎新聞
県が「司法面接」導入準備 児童虐待への聞き取り「1回限り」実現へ
児童虐待などの被害に遭った子どもに対して、児童相談所や捜査機関が事実確認のために行う聞き取り調査について、関係機関が連携して被害児童への聴取を原則として1回で終える「司法面接」の導入に向けた準備を県が進めていることが27日までに分かった。面接の繰り返しによる児童の心理的な負担を軽減するのが目的。専門家による研修会を近く開催、導入に向けた担当者の資質向上などを図る。
児童への虐待が疑われる事案があった場合、現在の仕組みでは、児童相談所や警察、検察などが個別に被害児童への聞き取りを行うのが通例。だが、同じ被害状況を何度も尋ねられたり、話したりすることが被害児童にとって精神的に大きな苦痛となることや、質問に誘導され、事実と異なる証言をしてしまうケースがあることが指摘されていた。 司法面接では、専門的な訓練を受けた面接者1人が原則として1回だけ児童への聞き取りを行い、他の機関は録画などで面接の様子を確認する。欧米では、被害児童の証言の録画映像が裁判の証拠にも採用されているという。日本の現行の刑事訴訟法では、記録映像をそのまま証拠として用いることが認められていないため、司法現場での実用化には至っていないが、全国の自治体では、司法面接の手法を取り入れる動きが広がりつつある。神奈川県では2006年度から被害児童からの聞き取りの録音、録画を開始。昨年度は、面接の録画DVDや発言録を県警に“捜査資料”として提供した。長崎県こども家庭課によると、県は、面接録画用の機材購入や研修会の開催費用などとして9月補正予算に関係経費400万円を計上。11月には認定NPO法人「子ども虐待ネグレクト防止ネットワーク」(神奈川県)による研修会を5日間の日程で開催。こども・女性・障害者支援センターや県警、長崎地検などから約20人が参加し、講義や模擬面接を通して質問方法などを身に付ける。県こども政策局の大串祐子局長は「児童相談所側からの強い要望もあった。子どもに負担をかけないための面接技能アップにつなげたい」と話している。
◆平成23(2011)年10月27日 産経新聞
児童虐待「区役所の機能強化を」大阪市の専門家会議が提言
児童虐待対策を検討してきた大阪市の専門家会議「次世代育成支援対策推進会議」は27日、区役所の子育て支援室を強化するなど区役所の機能強化を求める提言をまとめた。
昨年7月に大阪市西区で母親に遺棄された2人の幼児が虐待死した事件をきっかけに、同会議は弁護士や学識経験者などでつくる専門部会を設置、再発防止策の検討を進めてきた。提言では、区子育て支援室と区要保護児童対策地域協議会の機能強化▽こども相談センターの機能強化▽地域におけるネットワークの活性化-の3点を重点項目として指摘。関係機関との連携強化も求めた。現在は原則5人で担当している区子育て支援室について、提言では、職員の充実や専門性を高める必要があるとしている。児童虐待の対策を直接担当するこども相談センターだけでなく、住民に身近な区役所の機能を充実させることで、健康診断などを通じて虐待リスクの高い状況を事前に把握し、虐待予防につなげるのが狙い。市は今後、提言に基づいて虐待対策の見直しを進めていくという。
◆平成23(2011)年10月26日 読売新聞
中2暴行死 6月 一時保護レベル 男の反省認め見送る 児相=中部
名古屋市名東区の中学2年服部昌己(まさき)君(14)が暴行を受けて死亡した事件で、昌己君が今年6月に受けた暴行は、児童虐待に関する同市の基準で、一時保護を検討すべき程度に達していたことがわかった。市中央児童相談所(昭和区)によると、昌己君は、母親の交際相手の会社員酒井秀志容疑者(37)(傷害致死容疑で送検)から繰り返し暴行を受けていたが、酒井容疑者が反省しているとして保護を見送っていた。同児童相談所は読売新聞の取材に、対応が不十分だったことを認めた。
同市は、児童相談所が保護すべきかどうかを判断するにあたり、けがの程度や家庭の状況に応じた4段階の基準を設け、レベル3の「顔や腹に殴打の痕がある」、レベル4の「顔や腹に治療を要する外傷がある」などの場合、「一時保護を検討する」としている。児童相談所職員は6月、中学校から虐待の通報を受けて昌己君の家庭を訪問。左ほおのあざや右まぶたの内出血について、レベル3に相当すると判断した。しかし、酒井容疑者が訪問時、「かっとなって殴った。反省している」などと話したため、態度を改めると考え、保護を見送ったという。市児童福祉センター相談課の羽根祥充主幹は「我々の力不足だった」と話した。NPO法人・日本子どもの虐待防止民間ネットワークの岩城正光理事長は「子供を児童相談所が一時保護する際は保護者とトラブルになることも多いが、児童虐待への対処は子供の側に立つのが鉄則。激しい暴行などの虐待を確認すれば、原則として保護するという強い姿勢で臨む必要がある」と話している。
◆平成23(2011)年10月22日 時事通信
震災孤児の養育親族、孤立防げ=里親経験者が支援の動き-国も制度改正、支給額増
東日本大震災で両親や一人親を失った18歳未満の震災孤児は、岩手と宮城、福島の3県で計240人。引き取り手はほとんどが親族だ。突然の変化に戸惑い、身内ゆえ悩みを外に相談できず孤立しがちな親族に対し、震災前からの里親経験者が支援に乗り出した。国も里親制度を改正し、養育親族への支給額を一部引き上げた。
厚生労働省のまとめ(21日現在)によると、震災孤児のうち児童福祉施設の入所者は数人で、残りは親族が引き取っている。岩手県里親会は県の委託を受け、里親経験者が孤児を養育する親族を支援するための研修を実施。13日には、宮古市で親族との交流会を初めて開いた。親族からは、自分の子どもが同居の孤児に気を使うケースや生活習慣の違いに対する悩みの声が上がった。同会は年内に陸前高田、釜石、一関の各市で交流会を開くほか、里親経験者による家庭訪問も計画中だ。宮城県里親会も親族への支援を開始。「震災子ども支援室」を立ち上げた東北大に研修を依頼し、児童相談所と情報交換会も開いた。家庭訪問では、同大の臨床発達心理士とともに回る計画で、補助金を出す県子育て支援課の小林一裕課長は「同じ境遇にある人が共感し、寄り添う意義は大きい」と狙いを語る。
一方、孤児を引き取る親族は経済的負担も大きく、厚労省は生活費が支給される「親族里親」になるよう呼び掛けている。21日現在で、3県の親族111世帯が里親になった。9月には里親制度を改正。扶養義務がないおじ・おばの場合、3親等内の親族は対象外だった「養育里親」に切り替えることを認め、血縁関係のない里親と同様の手当が受給できるようになった。里親会の支援について、柏女霊峰淑徳大教授(子ども家庭福祉学)は「里親委託を解除できる権限を持つ行政と異なり、親族が心置きなく悩みを打ち明けられる関係が築ける。民間の特性を生かし、長い目で支援することも可能になる」と話す。
◆平成23(2011)年10月22日 河北新報
東北4県の児童養護施設退所者 相談できる環境訴え
児童養護施設の退所者の間で、社会に出た後の相談機能の充実を求める声が強いことが、宮城大の桑名佳代子教授(母性看護学)らによる調査で分かった。成人した退所者への追跡調査は全国でも珍しい。
調査は、退所者の社会的自立の実態を探ろうと、2010年10~11月、岩手、宮城、山形、福島の4県の児童養護施設計14カ所の協力を得て実施。現住所を把握できた20~50代の施設退所者164人に調査書を送り、89人が回答した。 退所後にどんな援助が必要か尋ねたところ、36.8%が「児童養護施設からの連絡や訪問、相談ができるようにしてほしい」と回答。施設以外への要望でも、25%が退所者専用の相談窓口の設置を挙げた。回答者の64%は高校卒業後、23.6%は中学卒業後に施設を退所し、約半数は職場の寮で、24.7%はアパートで暮らすようになった。退所後の困りごととして、対人関係、仕事、経済的困窮といった生活の悩みが、それぞれ20%弱を占めた。
社会的養護を必要とする子どもの自立を支えようと、宮城県内では里親と児童養護施設、児童相談所の三者が2008年に「こどもの夢ネットワーク」を結成。調査は自立支援の課題を探るため、ネットワークのメンバーである桑名教授らが実施した。養育里親で同ネットワークのト蔵(ぼくら)康行代表は「多くの人が退所後のケアの充実を求めたのは、施設から社会へ出た後に孤立感を抱いたため」と見ている。退所後のケアとして、退所者が里親経験者の家庭に下宿できるような仕組みづくりや基金の創設を検討し、自立を後押ししたいという。ト蔵代表は「施設の入所児童は増え続けているが、職員数は絶対的に不足している。家庭に近い環境で子どもが円滑な人間関係の作り方を身につけられるよう、施設から里親への委託を進めることも大切だ」と指摘している。